GONTITI 『ゴンチチの秋まつり』

すみだトリフォニー・ホールで行われた、年に1度ぐらいあるGONTITIスペシャル・ライヴに行った。当日のゲストにはKONISHIKIもやってくるとのこと。

その日は、ドラム、ベース、キーボード、ストリングスを従えたバンド形式だった。で、聴いていたのだが、自分の中では、もうGONTITIを聴くことに驚きがなくなってしまったのかもしれない。最近は普通に良質でスタンダードな曲に聞こえてしまっている。自分の中の、彼らのストレンジさを楽しむ感覚が、もう消え失せてしまったのかもしれない。

彼らのスタンダードなスタイルは、ギター2台のみと思われがちだが、実は、ファースト・アルバムからの音楽は、シンセサイザーとの打ち込みと、ギターの素朴な響きの組み合わせが、「ここではないどこか」をイメージさせる、という音楽だったのだ。そして、2人が持つ軽やかなキャラクターと音楽に対するスタンスが、高校生だった私をすっかり感化してしまったのだった。曲のタイトルも奇妙だった。「緑の性格」「帰ってきた息子」「修学旅行夜行列車南国音楽」「アスピリン&アレルギー」など。ウケ狙いでは作れないようなものばかり。だから、今でも新曲でシンセサイザーが編曲されているものを聴くと、うれしくなる。12月にも、アルバムが出るらしいが、軽やかでストレンジな作品を期待できるだろうか。もう無理かなあ。ストレングス・アレンジが、アントニオ・カルロス・ジョビンと共演していたジャキス・モレレンバウム(ライヴでもゲストで登場)だというから、やっぱり普通に良質な音楽になってしまうのか。

会場の階段で、すれ違った茶髪のおじいさんが、私を上目遣いに見たので、目が合った。高木ブーだった。テレビは人を若く見せる。