大崎善生『聖の青春 (講談社文庫)』

聖の青春 (講談社文庫)

どういうきっかけか忘れたが、29歳で他界した棋士村山聖のドキュメンタリー『聖の青春』を読んだ。たぶん自分が30歳になったことと、関係しているのかもしれない。

5歳で腎機能障害(腎ネフローゼ)を発病した村山聖は、入院中に母親が買い与えた将棋の本に出会う。それから将棋にのめりこみ、死と隣り合わせの環境の中、自分の生きる希望を将棋に見出す。その後、名人になることだけを目標として、膀胱癌で亡くなる29歳まで駆け抜けた人生の記録。詳しい内容は、読んでください(本当は、細かく書くのが面倒なんです)。村山の命日は、自分の誕生日と同じであることを、読んでから知った。

よく覚えてるのは、村山が中学一年生のとき、奨励会入りの試験で好成績をあげながら、師弟関係のしがらみで入会を許されなかったときに「大人は嫌いじゃ」と言ったところ。自分は明日どうなるかもわからないというのに、大人の都合で自分の生きる希望を翻弄される理不尽さへの、魂の叫び。

自分が叫びたかったときってあるだろうか。思い出してみると、言うべきことを言えなかった後悔ばかり。へんに人がよくて気が小さいものだから、他人の意向に反することを直感的に避けてしまう。だから、いつか何かのタイミングで叫ぶことを(たぶんクレームとか)狙っている。将来ありうるのは…、「なんで嫌いな長ネギ入れるんだよ!」とか。スケール小さすぎ。