ラッセル『幸福論』

ラッセル幸福論 (岩波文庫)

ラッセル幸福論 (岩波文庫)

自意識過剰って損だよなあ。id:rararapocari:20050507で薦められたこの本を読んで、ますますそう思うようになった。
さまざまな不幸の原因を明らかにして、さらに幸福に至る道について、実践的な切り口で考察していく、という方法で、その内容はわかりやすかった。何よりも、1930年に書かれたこの本が、現代に十分通用するというところに、メッセージのたくましさとシンプルさを感じ取った。読んだ上で想起された様々な個人的感情を書くのは、愚痴になりそうなので書かないが、もっとも印象に残ったのはこの一言である。

ほかの方法では治しようもないくらい、どっぷり自己に没頭している不幸な人々にとっては、外的な訓練こそ幸福に至る唯一の道なのだ。

やっぱり、自意識過剰って、損だよなあ。

どこかでこういう話を読んだなあ、と思っていたら、村上龍の『昭和歌謡大全集 (幻冬舎文庫)』を思い出した。あれは、閉鎖的な集団の中でしかアイデンティティを保てなかった登場人物たちが、外部に関心の対象を向けることで(多少、荒唐無稽ではあるが)、生きがいを得ていく、という話だった。私は、その話も好きだ。