pizzicato five『Overdose』

Overdose

SEとして仕事をしているが、先日、1つのプロジェクトが終わった。ある製品のテスト評価だったが、その開発元がアメリカのサンノゼの研究所にあるので、テスト結果を伝えに行くことになった。本当は行くはずだった同僚が、急に別プロジェクトがはじまり、行けなくなったせいである。私はなかなか旅行しないので、この機会を利用させてもらうことにした。海外旅行は2度目。1度目は6年前の韓国。一時は、本気で、『アメリカ横断ウルトラクイズ』でアメリカに行こうかと思っていた。

本当は行くはずだった同僚から『地球の歩き方 サンフランシスコとシリコンバレー〈2003~2004年版〉 (地球の歩き方)』をもらったものの、もうひとつ実感のわかないまま、当日を迎えた。16時10分発の飛行機に乗るはずだったが、空港に着いたのが15時10分(あとで、もっと早く来るべきだったと気づく)。海外旅行用の携帯電話を借りたあと、チケットのチェックインをしていたら、係の人に「もう搭乗がはじまってますね。あと5分で搭乗ゲートが閉まるので、急いでください。」と言われる。あと5分。走ってその場を後にした。

X線検査、出国審査(頼んで列の先頭に入れてもらった)を駆け抜け、36番ゲート目指してダッシュ。ところが、36番ゲートは一番遠い。動く歩道の上も駆けつつ進んでいくと、前方から同じく走ってくるフライト・アテンダントの女性が。彼女はこう叫んだ。
"San Francisco?!"
私は答えた。"Yes!"
これが、この旅で最初に交わした英語の会話である。どうやら、出国審査の時に質問したユナイテッド航空の係の人が、連絡しておいてくれたらしい。自分と同様の人がほかにも何人かいたらしい。どうにかゲートにたどり着き、他の搭乗客がずらりと並んで座る中、ようやく自分の席を探し当てた。間に合ったという安心感とともに、精神が落ち着くのを待っていると、ふと、pizzicato fiveのアルバム『Overdose』に入っている『エアプレイン』という曲を思い出した。

遊んで暮らせるなら それはそれでイイんじゃない
パーティに顔出せば それはそれでイイんじゃない
税金を払ってりゃ  それはそれでイイんじゃない
飛行機に間に合えば それはそれでイイんじゃない

もともとは、ロック・ミュージシャンの典型的な破天荒ぶりに対して皮肉をこめた曲である。
飛行機に間に合えば、たいていのことは許される。出張先での、英語のプレゼンテーションは、あがらないようにできるだろうか、とか、そんなことはどうでもよくなってしまった。とにかく、こうして、アメリカへの旅(ペーパーテストなし)は始まった。