週刊東洋経済『スポーツビジネス完全解明』

ボクシングの亀田家問題や、朝青龍をはじめとする相撲の問題など、スポーツ界のさまざまな話題には、感情論が先行しがちだと思っていた。そんなとき、ビジネスを主軸としたときにスポーツ界がどう見えるのか、を分析したのが、主題の特集記事だった。(1月26日号) 本当は、ジャーナリストの日垣隆氏がメルマガで薦めていたのがいちばん大きいんだけど。

内容は、オリンピックとFIFAワールドカップに関わるビジネス(とくに放映権)の巨大化の歴史や、相撲が黒字続きの安定経営であることや、全国のボクシングジムの半分が経営的危機を迎え、同様にプロボクサーも日本チャンピオンクラスでさえアルバイトなしで生活できない「ハングリー」さであることなどが、簡潔にまとめられていて面白かった。

その中でも目を引いたのは、日テレが中継する正月の箱根駅伝が、中継の技術力を高めた結果、1987年の初の全編生中継で平均視聴率18%をたたき出し、現在も20%以上を叩き出す「お化け番組」である、という記事だった。

マチュアである学生ランナーを放送局やスポンサーが支援する姿勢に感心すると同時に、いちばん目を引いたのは、1987年に日テレのスポーツプロデューサーだった坂田信行氏のコメントだった。

(初の生中継で高視聴率を獲得し、)翌88年には箱根を全国大会にする提案も持ち上がっていたが、坂田氏はこれをはねのける。「テレビ放送をすることで、箱根を変えてはいけない。」箱根を中継することになって、最も気にかけたのはこの点だった。「スポーツ中継というのは、その競技を啓蒙すること。
その競技が人々を魅了するから放送する。『中継してやる』ということになったら、選手への態度も変わってしまう。」

何だか、K-1や亀田家ボクシングの中継を思い出しちゃったなあ。テレビ局が自分たちの都合だけで主導すると、ある種の変質を起こしてしまうのは、さんざん見てきたから。

ふつう盛り上げるとなれば、どうしても煽ったり演出したりする方向に行くだろうし、そこに関わる人が多ければ多いほど、目の前のお金が動くだろうから。でも、シビアに視聴率結果を追うんだったら、この駅伝の中継姿勢を参考にしてほしいなあ、と思うのだった。