スターと稽古

昼食をとった店が入っているビルのエントランスで、人が集まっていた。何かの撮影らしい。エントランスの外に出てみると、私のわずか数メートル先に反町隆史が立っていた。

さすがテレビによく出る人だけあって、顔立ちは整っている。メイクのせいもあるかもしれないが、よく日焼けしていた。

反町隆史は中に入っていき、エントランスのエスカレータを何度も乗り降りしていた。彼の後ろには青田典子ともうひとり名前を思い出せない俳優。後で調べたら、劇団・大人計画グループ魂にも参加している、三宅弘城だった。つまり、日本テレビのドラマ『ドリーム☆アゲイン』のロケだった。

こうしてみると芸能人もふつうに生きているなあ、という、ありきたりだがよくわからない感想を持つ。

ふと思ったのだが、この3人の中で、もっとも芝居の稽古をしているのは、間違いなく三宅弘城だろう。劇団や歌舞伎など舞台出身の人たちは、ほぼ毎日稽古しているだろう、と疑いなく思ってしまう。反町隆史もふだんから芝居の稽古することはあるのか。そういうことには興味がある。

以下、うろ覚え。
かつての映画スター、丹波哲郎は台本を読まず、セリフも覚えないことで有名で、撮影現場に来て最初の一言が、「で、俺の台本はどこにあるんだ?」と言ったこともあるらしい。厳しいことで知られるある映画監督も、丹波哲郎には「じゃ、ちょっと稽古しましょうか」とへりくだる。しかし、撮影は一発OK。ふだんからの稽古なんて、スターの存在感の前では、しゃらくさいものなのか。

丹波哲郎を映画『砂の器』で見てその迫力に圧倒されてから、こんなよく出所のわからないエピソードも私はすっかり信じている。

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