新海誠『秒速5センチメートル』

秒速5センチメートル 通常版 [DVD]

秒速5センチメートル 通常版 [DVD]

5月5日なので、5が入った数字の映画を見た。ただの後付け。

1章『桜花抄』2章『コスモナウト』3章『秒速5センチメートル』。時間と距離と速度がモチーフになっている。

小学校の卒業と同時に離ればなれになった遠野貴樹(再会後、鹿児島へ)と篠原明里(栃木の岩舟へ)。貴樹が明里に再会しに岩舟へ行く。栃木の田園風景。岩井俊二リリィ・シュシュのすべて』と舞台が同じ。田園風景の定番なのか。

1章の最後、別れ際に言った明里の言葉、「貴樹くんは、きっとこの先も大丈夫だと思う」明里は決別の予感を込めて言ったのではないか。しかし、このひとことは、呪いのように貴樹に降りかかってしまった。鹿児島に行っても、貴樹は明里への想いを消化できずに、そのあとの時間、明里の幻影を追いかけるように過ごしてしまった。取りようによってはとても残酷な話だ。だから2章は貴樹(と彼を見つめる花苗)の話で、明里の「2章」は無かった。

1章2章は、ふつうに話を楽しんでいた。全体にあるのは恋愛と相性のいいノスタルジー。わかってはいるが、この種のテーマに何度もひっかかって(つまり見て)しまう。みんなそうなのか。風景はディテールまで写実的に描かれている。庵野秀明・監督『彼氏彼女の事情』を思い出す。

3章、出会うことの無いまま大人になった貴樹と明里を最後にどう描くのか期待した。最後の、山崎まさよしの『One more time, One more chance』それで総崩れ。映画のイメージに合致した曲を新海監督が探した? ほんとかよ。たまたま私が聴いたばかりのミズノマリ『東京の街に雪が降る日、ふたりの恋は終わった。』のほうが合っている、と思ったからか。単に私が山崎まさよしの音楽を好きでないからか。あの声が気になってしまって。だって、主役の水橋研二の声と、違いすぎるじゃない。

それにしても、水橋研二は30代なのにナイーブ声。実写でもそんな役が多い。私がふと気が向いて日本映画を見ると、浅野忠信よりも水橋研二のほうが、もう彼を追いかけて見るほうがいいのでは、と思うくらい遭遇率が高い。彼の所属事務所の写真(http://www.breathinc.com/kenjim.htm)を見てみた。ちょっとこれはひどいんじゃないか。もう少しちゃんと撮ってあげたほうが。それとも、悪意でもあるのか。