糸井重里さんに聞く

東京庭園美術館で開かれた、「糸井重里さんに聞く」に行ってきた。これは、8周年を迎えたWebサイト「ほぼ日刊イトイ新聞」を解体する、と宣言した糸井重里氏に、作家の日垣隆氏がインタビューを申し込み、そこに日垣氏が主催するメールマガジンの読者を招待する、というものである。私は熱心ではないが「ほぼ日」をほぼ毎日見る、という読者で、と同時に、日垣氏メルマガを毎週楽しみにしているので、待ってました、とばかりに申し込んだ。無料である。

会場の大ホールは250人が入るぐらいの大きさで、大きなシャンデリアが下がっていた。定刻になると会場はほぼ満席になり、前方のステージに、日垣氏と糸井氏がそれぞれ座り、「ほぼ日」解体後や「楽しい仕事」をテーマに話を進めていった。

今回のインタビューは、特にまとめられることがない秘密会議みたいなもの、ということなので、自分の備忘録は取ったが、今の段階では公開を控える。インタビューは2時間以上続けられた。

糸井氏は、淡々と言葉を発して、自分の経験と、喩え話をする。うっかりすると眠くなりそうだが、話の内容があまりに本質的なので、ついていこうと必死になるうちに頭の温度が異常に高まり、体は妙に緊張していた(少し席が狭いのもあったけど)。まだ止まらない咳も、この時は出なかった。

閉館の午後9時が迫り、会場から完全撤退しなくてはならないらしい。日垣氏いわく「都営なので」。それはいいとしても、ほかにも、案内表示はA4の大きさで、文字の大きさは何ポイントで、貼り付けるテープまで指定があって、わざわざ買いに行ったそうだ。
どっからでもかかって来い!―売文生活日記
日垣氏は、さらに施設の人に怒られたらしい。「開場の2時間前なのに人がたくさん来てパニックになってます!」「(そりゃあ美術館のほかのところ見にきたに決まってんじゃんよ、思いつつも)何人ですか?」「12,3人です」日垣氏はさすが都営、と居直ったらしい。これに似たような話は、日垣氏の著書『どっからでもかかって来い!―売文生活日記』に多数書かれている。銀行員や郵便局の応対に頭に来たことがある人に、お勧めします。

私は本質的な話を聴くのが大好きで、究極の理想としては、自分もそういう話ができるようになるといいなあ、と思っている。でもそのための具体的な人生経験が圧倒的に足りない。今日の話も、どうやって実生活に役立てていこうか。今日聴いた話と、実体験が重なり合ったときが来るといいなあ、と呑気に希望する。