中川淳一郎『ウェブはバカと暇人のもの』

ウェブはバカと暇人のもの (光文社新書)

ウェブはバカと暇人のもの (光文社新書)

ネットの衆愚、がテーマになっている。ネットへの無邪気な希望に疑問を投げかける類書に、ひろゆき2ちゃんねるはなぜ潰れないのか?』(本文中でも引用あり)があるが、この本は正面切って「バカと暇人」という言葉を使った点が新しい。ネット上にあふれる、ただ日常を綴ったブログやコメント、さらにはよくわからない義憤に駆られた「炎上」など、「バカ」と「暇人」の所業が多く紹介されている。著者が編集したネットニュースに対してのむちゃくちゃなクレーム対処で、「実害を受けた当事者の方を見つけて、私に連絡するよう伝えてください」。バカと共犯関係になってはいけないのだ。
しかし、本書の内容は、著者のネットニュース編集長の体験や実感などに留まっているところが物足りない。そしてそれらはもっと冗長さを省いて語れたはずだ。結論も、「現実生活への回帰」という、ネット vs. 二項対立、というフレームから逃れられず、やや陳腐な印象を受ける。著者自身も、この本を書くにあたり、新たな発見や考察、というものは感じられなかったのではないか。
とはいえ、テレビとネットは対立するどころか、内容的に強く連動している(たとえば、テレビで紹介された話題がネットで即座に検索される)という指摘は、当たり前のようでいてなかなか無かった。テレビで時間を無駄にするのはやめよう、としている一方で、いつのまにかネットで何時間も浪費している、ということは避けたい。「2ちゃんねる」のまとめサイト、見すぎるのはやめようっと。
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追記

著者がネットニュースで編集を重ねた結果、多くのページビューを稼ぎ出す、つまりウケる要素が、以下のように紹介されている。ネットでなくても参考になる。

  1. 話題にしたい部分があるもの、突っ込みどころがあるもの
  2. 身近であるもの(B級感があるもの)
  3. 非常に意見の鋭いもの
  4. テレビで一度紹介されているもの。テレビで人気のあるもの、ヤフートピックスが選ぶもの
  5. モラルを問うもの
  6. 芸能人関係のもの
  7. エロ
  8. 美人
  9. 時事性があるもの