司馬遼太郎『坂の上の雲 三』

ようやく三巻を読み始めた。冒頭で、壮絶な闘病生活を送っていた正岡子規が亡くなってしまう。

(子規は)墓碑についても、よく自然石などを用いた気どったものがあるが、あれはいやみである、とおもっていた。ごくふつうなのがいい。子規は平かでごく普通な、さりげない常識性の世界に美を見出そうとした人物である。

「さりげない常識性の世界に美を見出す」という表現は、言われてみれば当然のことにも思えるが、こうして活字にして提示されると、なるほど、と感慨を新たにした。

この本を薦めてくれた先輩同僚とも確認したが、この作品は近代史を背景にしながらも、その描写が細かすぎることなく、むしろ淡々としている。それにより、登場人物の描写がクローズアップされて、自分と比較したり、自分の生活に引き寄せて考えることがやりやすくなっている。なぜ司馬遼太郎がこれほどもてはやされるのか、わかる気がした。歴史上の人物が本当に会話しているみたいだからなあ。

坂の上の雲」って、NHKが3年間にわたってドラマを放送するんだってね。2009年秋からだそうで。(http://www.nhk.or.jp/matsuyama/sakanoue/)

新装版 坂の上の雲 (3) (文春文庫)

新装版 坂の上の雲 (3) (文春文庫)