受け入れがたい空間

先輩社員が、「二胡を聴きに行かないか」というので、とりあえず行く返事をしていた。どこかのホールでやるのか、と思っていたら、彼が常連で中国人女性がいる飲み屋での、5周年記念パフォーマンスということだった。

その飲み屋には、8月の終わりぐらいにも一度行ったことがあった。でも、そもそもそういう飲み屋の雰囲気に慣れない私はただおとなしくしているばかりで、無理やり振られたカラオケにそれなりに応じるしかできなかった。

それでもつきあいを重視して、計3人でその新橋の店に入った。中には10人近くのお客さんがいて、そこそに盛り上がっていた。

前座と称して、ひとりのお客さんが和笛を吹いた。あまりうまいとは言えなかったが、それはそれで楽しかった。

その後、中国人女性が、雑技と称してシンプルなマジックやジャグリングを披露した。これもそれなりに楽しかった。

さらに、別の中国人女性が、ニ胡の演奏を何曲か演奏した。日本人に馴染みの曲を多く演奏してくれたので、これも楽しかった。

だが、「里の秋」を演奏時に、何人かのお客さんが酔った声で間のずれた合唱を始めてしまったとき、私の違和感がピークに達してしまった。

帰りたい。

結局、中高年のサラリーマン飲み会に象徴されるような、どうでもいい軽口と駄洒落が支配する空間を徹底的に嫌っている、ということを改めて自覚した。
そして、中国人のお姉さんとの会話。どうしてもある種の役割を演じさせられているような気がして居心地が悪く、無口になるしかなかった。昨日の本ではないが、あきらかに前頭葉の機能は衰えていた。

私は、かつて所属していた部署では、そういう飲み会自体がなかったので、今さらながらこんな青臭い違和感に苦しめられてしまう。もっと歳をとれば、そんなこともスルーできるのかもしれない。でもそんなことのためにわざわざ歳をとりたくない。

単にコミュニケーションが下手で世間知らずでつきあいの狭い人間のわがまま、と言われることもわかっている。それでも敢えて申し上げる。

無理です。勘弁してください。

音の世界遺産 中国の二胡

音の世界遺産 中国の二胡