そっくりさんCMソング

そういうことだったのか。まるで気づかなかった。

ハリウッド女優キャメロン・ディアスが登場した今夏のソフトバンクの携帯電話のテレビCMのバックで流れていた豪州の女性歌手オリビアニュートンジョンのヒット曲「ザナドゥ」(1980年)。


 実はこれ、歌っていたのは当人ではなく、そっくりさん。一聴しただけでは分からない見事なオリビアぶりだ。


 「楽曲などの権利を持つオリビアらがCMでの使用を拒否した」(業界筋)ため、この楽曲にこだわった制作側が編み出した苦肉の策らしい。歌っている当人がCMに登場するわけではないから声が似ていても“問題”にはならないというわけだ。


 これ以外にもサントリーのチューハイ「アワーズ」のテレビCMに使われた英の電気ポップ・デュオ、バグルスの「ラジオ・スターの悲劇」(79年)や、日産の高級ミニバン「エルグランド」の「ゴールドフィンガー」(64年。映画007/ゴールドフィンガーのテーマ曲。オリジナルはシャーリー・バッシー)、森永製菓の「ウイダーinゼリー」で使われた米ロックバンド、ナックの「マイ・シャローナ」(79年)などは、いずれも“そっくりさんバージョン”だ。


(イザ!『本人じゃないの!? そっくり歌声、CM席巻』http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/entertainment/96884/)

記事によれば、オリジナルなら使用できたとしてもその使用料が高額だが、そっくりさんなら安上がり、ということらしい。日本の音楽出版社などは、「いつか欧米のレコード会社から巨額な賠償金を請求されるかも」と警鐘を鳴らしている、と記事は締めくくっている。

コンセプトといい、その実行方法といい、製作側の安易な姿勢が透けて見える。もちろんCMソングをオリジナルで作ってヒットさせる、ということも考えるんだろうが、そこまで冒険することが難しいのか。

ところで、私が最も印象に残っているCMは、缶コーヒーのジョージアのテレビCMで、坊主頭の青年がギターをかき鳴らして歌っていたあの曲である。

「♪ぼくはきみのシンデレラ・ボーイ 恋する国の王子様さ〜」

渡哲也「あの歌には深さが足りない」

でも、バカバカしくて笑っちゃって、妙にすがすがしい。