KIRINJI Premium Live@日比谷野外大音楽堂
DJイベントに行くようになってから、ライヴにあまり行かなくなった。それでも、好きなミュージシャンのライヴは気になる。7月末の一般発売でキリンジの日比谷野音ライヴのチケットを取ろうかと思ったが、全然取れなかった。開演間近になって、オークションサイトを覗いてみたが、やっぱり高値がついていた。まあいいか、と諦めていた。
それでも気になって、16日になってキリンジの掲示板を覗いたら、10分前に「チケット譲ります」の書き込みがあった。それであわてて申し込んだ。やっぱり行きたかったのだ。
野音でチケットを受け取るときにおまけでレアなライヴ音源などを渡したが、淡々と受け取られて少し拍子抜けした。
セットリスト
- P.D.M. (オープニング)
- YOU AND ME (+MC)
- Drive Me Crazy
- 汗染みは淡いブルース
- あの世で罰を受けるほど (+MC)
- 雨は毛布のように (ややシャッフル)
- クレイジーサマー
- ブラインドタッチの織姫
- Golden harvest
- グッデイ・グッバイ (+MC)
- Ladybird (+MC)
- ロープウェイから今日は
- 唐変木のためのガイダンス (ややレゲエ風)
- 冠水橋 (+MC)
- ブルーバード
- ジョナサン
- ムラサキ☆サンセット
- ロマンティック街道 (+MC)
- 今日も誰かの誕生日
- サイレンの歌
アンコール
- エイリアンズ
- 君のことだよ
- 茜色したあの空は
- キリンジによれば、選曲では野外で演奏したい曲のほかに雨の場合に備えての曲を意識したそうだ。
- キリンジのライヴでは熱狂、ということはなく、みんな立ったり座ったりして盛り上がってはいるが、行儀よく聴いている。
- ドラムの小松シゲル(ノーナリーヴス)とベースの沖山優司(元ジューシィフルーツ)の安定感はさすが。ジーンズの裾が震えるぐらいのグルーヴの振動が来た。そして、堀込泰行のヴォーカルは、ライヴでもブレがなくて歌詞も聴きとりやすい。
- ステージのバックのモニタは画面や幕ではなく、縦にした蛍光灯を縦横に並べたようになっていて、どうやって映像をコントロールしているのか気になった。
- 現在ダウンロードのみ販売中の新曲(11、16、19、アンコール2)は、デルフォニクスとのコラボレートで文具+CDのセットでも限定販売されている。そのセットで聴いたのだが、キリンジの曲としてもうひとつピンと来なかった。しかし、ライヴで聴いて確かにキリンジの曲だと納得した。つまり今でもスタジオ録音では、冨田恵一の仕事を探してしまうのだ。ちなみに、ダウンロードで買った曲は、どんなにファンであってもたいていほったらかしにしてしまう。
- 「ロープウェイから今日(こんにち)は」は好きな曲だが、サビの歌詞を聴いて(効いて)泣きそうになってしまったのは初めてだった。ストレスが溜まっているのか。(たぶん)サラリーマンがスーツ姿のままふらりと山を訪れてしまった、というような歌詞で、明るいメロディーではあるが寂しさを覚えて切なくなる。
揺れるロープウェイから
誰に手を振ろう
人見知りの男も
アメリカ人のように
今日は、と声をかける
コ、
ン、
ニ、
チ、
ワ!
故・阿久悠は、生前「いまの歌にはセリフはあるが場面がない」と評したそうだ。
キリンジの歌詞は、都市生活者の日常に見え隠れする抑圧と解放、絶望と希望の場面を、冷静な距離感を持って描き出そうとしている。それもユーモアと毒のフレイヴァーつきで。それが彼らの詩が文学的と言われる所以(ゆえん)であると、私は思っている。
行っておいてよかった。