中国にて 1日目

成田から4時間程度のフライトの後、広州白雲国際空港に到着した。別に竹でできているわけではない。アメリカに行ったときは、英語ばっかりだと思ったが、今回は、漢字ばっかりだった。同様に集合した私以外の日本からのプロジェクト・メンバーは5人で、私は31歳でも最年少である。みなラフな私服でやってきた。私だけスーツだった。

外は晴れで、日本で今日は猛暑ですね、という日のような感じだった。でも、変な湿っぽさはないから、それほど不快じゃない。中国支社のメンバーの手引きで、今回の目的地、汕尾(Shanwei)市までワゴン車を運転してくれるドライバーを紹介された。「何かあったら、短い英語、たとえばstopと指示してね」と紹介される。何か、とは、どこかに連れ去られた場合、のことらしい。

車は高速を140kmぐらいで飛ばしていく。たぶん標識を見ると100kmが制限速度で、ほかの車をどんどんと強引に追い越していく。あれ、今の「公安」と書いてある車、パトカーじゃないのか。でもとくに何も言われない。フロントガラスにドカッ、っという音がしてびっくりすると、鳥らしきものがぶつかった痕が残っていた。

中国の丘陵地帯は、土が赤い。周囲にはちらほらと、いかにも中国、というようなほこらが見える。2時間30分ぐらい走って、高速を降りると、周囲に人と住宅が見えてきた。住宅は、どこかが崩れていたりして、みすぼらしいものばかりだった。ドライバーは、ぱっぱー、とクラクションを鳴らしまくって、周囲のバイクに警告している。「いつもここから」のどけどけーぃ、みたいに。

市の中央の大通りに近づくと、だんだんと交通量も増え、みんなが、挨拶をするみたいにクラクションを鳴らしまくっている。バイクがとても多い。ノーヘル当たり前。たぶん家族だろう、5人乗りしているものもあった。


大通り沿いに、今回泊まるホテルがあった。check-in、と言ってみるが、フロントの若いお姉さんたちは、何のことかわからない、といった表情だ。このホテル、英語が通じないのか。4つ星なのに。目の前に"Reception"って書いてあるのに!

実は、今回のメンバーに中国語に自信のあるメンバーはいない。私については、まったくわからない。以前のプロジェクトで台湾などに行っていたメンバーがいろいろと試みるが、会話がなかなか通じない。ここまで運んできてくれたドライバーが友達に電話をかけてくれたりして。結局役に立ったのは、筆談(漢字ならなんとかなる)と図解だった。30分かけて、6人それぞれのチェックインとチェックアウトの日付を伝えられた。大丈夫なのか、こんなんで。一晩238元(≒3800円)。

夜も7時くらい(東京に比べて、1時間遅い時差がある)だったので、食事する場所を探しに街を散策した。ホテルから少し離れた裏通りを歩くと、埃っぽい道をバイクや三輪オートが行き交い、屋台や市場があちらこちらに見える。海が近い田舎の雰囲気だった。歩いていると、珍しそうなものを見るように、人々はこちらを見ている。外国からやってきた人を見ること自体が、ほとんどないのではないか。こちらも写真を撮ってみたいが、まだそこまで精神的余裕がないし、トラブルになると嫌だからやめておく。

結局、ホテル近くの海鮮レストランのビルに入った。個室に通され、メニューを頼もうとすると、別の場所にあるイケスを見て、選んでくれ、という(のも筆談)。移動しようとしたら、私は部屋に財布を置いてきてしまった。あわてて取りに行って戻ってくると、もうみんなの姿がない。あ、まずい、はぐれちゃった。どーしよー。どうしたのか、と、心配そうに店員がこちらを見ているが、こちらの状況を伝える手段がまったくない。これは困ったぞ。
すぐにメンバーが見つけてくれて、食いっぱぐれるピンチは脱した。しかし、これを機に、中国語を覚えよう、という気持ちが沸いた。今晩の食費は、110元(≒1800円)。日本に比べたらやっぱり安い。

ホテルに帰った。よくわからないのは、シャワーである。ボックスタイプのものは、操作方法がよくわからない。外にあるものは、そのまま使えば洗面所の床が水浸しになる。でも仕方ない。あー、びちゃびちゃ。日本のユニットバスに慣れていると、違和感を覚える。

しばらくすると、ホテルからインターネットにつなげる(1時間あたり5元≒80円)ための設定をしてくれるスタッフが部屋に来た。ふつうのシャツを着た、童顔の青年。片腕がない。彼は少し英語を話せるので、電話のモーニングコールを設定してもらう。英語が通じる、ということが、これほどありがたいと思ったことがなかった。

TVをつけてみると、字幕が入っていて、かろうじて意味がわかる。日本のオリエンタルラジオにそっくりな2人組が出ていた。

昨日からせきが出るので、風邪薬を飲んで寝る。が、少々、部屋の外がうるさい。そういえば堂々とタバコをすっている子どもがいた。法律はどうなってるんだっけ。ベッドはきれいだが、小さい。足が出るので斜めに寝る。少し硬いが眠るにはちょうどいい。おやすみなさい。