香西秀信/反論の技術 その意義と訓練法

反論の技術―その意義と訓練方法 (オピニオン叢書)
気を取り直して、最近読んだ本の感想を書く。
私は議論というものが本当に苦手で、ディベートなんていうものにはまるで関心を寄せなかった(何より、発表者が相手に向かって「これで何も言えないだろう」という顔が嫌だった)。他人と意見が衝突しようものなら、「あーどうぞ」とさっさと譲るぐらいだった。ただ、仕事でどうしても自分の意見を通す必要があったり、こうして文章を書いたりしていると、議論は避けられない(と言いながら、文章はできるだけ無難にまとめようとするのが私の気の小ささである)。

この本には、議論指導の本であり、教師が生徒に教える際の考え方や、基本的な訓練方法が書かれている。「反論は議論の本質である」「反論は真理を保証する」という主張で、一般向けとしても役に立つ。

ユーモアの裏返しの意地悪さも見え隠れする。反論の教材として、小学校の教科書に載っている意見文に真っ向から反論している。「あり一匹、花一輪でも大切にしなければいけません。」という小学生の作文に、「誰も反対しないことを意見として主張する癖をつけてはいけない。そう書きながら、蚊は線香で麻痺させる、蝿は殺虫剤で撃墜する、油虫はスリッパで叩き潰す、というのであれば、一体何のための意見なのか。」と、こんな具合である。

「議論は相手の論破と、聴衆の説得の二段構えになっている」「(日本人の議論に)足りないのは論理性ではない。聴衆を面白がらせようという努力である」という、聴衆の存在を無視しない、という視点には感心させられた。正しいことだけ言やあ良いってもんじゃないですよね(筋が通ってないのも困るけど)。

反論しやすいお題って、なんでしょうね。ちょっと前ならコピーコントロールCD女性専用車両、今なら電気用品安全法とか。新聞の投稿意見文もちょうどよさそう。他人のブログに反論のトラックバックばっかり送るようになったらどうしよう。いや、そのぐらいの理解ができるようにはなりたい。

ぼくは、このほんをよんで、ただしいぎろんをしていこうとおもいます。おわり。