大竹まこと/結論、思い出だけを抱いて死ぬのだ

結論、思い出だけを抱いて死ぬのだ
なぜこの本を読もうと思ったのか思い出せない。たぶん、シティボーイズの今年の公演の案内ハガキが来たからだろう。

内容は、書店で配られる小冊子「本の旅人」の1年間の連載エッセイに、ほぼ同数の書下ろしを加えたもの。本のタイトルは寂しいが、中身も寂しい。

もちろん中身が薄いという意味ではない。笑えることも情けないことも淡々と書いていて、対象からの距離をつねに感じる。そしてニヒリスティック。それが寂しさの正体だろう。と同時に、それが面白さの正体でもある。いや、なんだか笑わないとやってられない感じになるのですよ。本編に2回出てくる叔父さんへの愛、それすらも寂しい。

「私などが物を書いてよいのかの迷いは常にある。」と著者は言う。しかし、私は彼のような淡々とした文章を書けたらいいなあ、と思っている。

整体に出かけたら、体の前面の痛みやだるさは、肩の張りがひどくなるとそうなるかもしれない、と言われ、集中的にマッサージされた。肩のせいでそんなふうになるなんて。わけもなく、読んだ本の寂しさが増幅したように思えた。