沖野修也/DJ選曲術

DJ選曲術 何を考えながらDJは曲を選びそしてつないでいるのか? 沖野修也著 GROOVE Presents
新年おめでとうございます。

去年、友人にキリンジの曲を紹介してほしい、と頼まれて、それならmix CDの体裁にしよう、と考えていた。そんなときにこの本を買った。

去年、DJのM7さんとお会いしたとき、この本が「あまり物足りなかった」とおっしゃっていた(と思う)。それはバリバリにDJをしたりレコードを買ったりしている人にはそうかもしれない。でも私のような、よくわかっていない人間には、去年売れた新書の「さおだけ屋…」のような役割を果たしてくれる。

内容は、選曲についての基本的にことがら、たとえば必然性、テーマ、ストーリーの重要性などについて、わかりやすい文章で丁寧に語っている。選曲グラフを用いて、スターDJと言われる人たちの選曲を解析する「選曲グラフ」は、野暮なことをするな、と賛否両論が分かれるかもしれない。実際に筆者も「神聖な領域に立ち入るタブー」と書いている。しかし、その結果、「王様が裸」なのかどうかわかるならば、私はやってくれて大正解と思っている。そもそも筆者がこの本を書いた動機が、大したプレイをできない海外DJが、日本で高いギャラをもらっており、それを日本のオーディエンスが甘やかしている、という状況ならば、なおさらそう思う。選曲が、本当に創造的な行為であるならば、検証や分析に十分耐えうるはずだし、そうあってほしいと音楽ファンの私も願う。

筆者の沖野修也氏の文章はうまい。選曲についての説明がスムーズに頭に入ってくる。筆者の中で、自らの選曲が相当に具体的なメソッドとしてイメージされているのだろう。また、本文中で、この本が「文章読本」にたとえられていて、この本自体もそういうものを読んでから書かれたのではないか、とさえ思う。

リテラシー」という言葉が、去年から気になるキーワードとして、私の中にある。私はDJができないが、クラブへ行ってDJのプレイを聴くときに、どのような意図が込められているかを理解するリテラシーを持ちたいと思っていた。この本はその助けになるし、同様なテーマを扱った書籍やこの本の改訂版が出てくることも期待する。

さて、どんな曲順にしようかな。